美しいキモノ・アカデミー「白鷹の絹物語」へ〜その②〜 A lecture of Shirotakaomeshi

さて、トークショーの後半は、養蚕史研究家の沢辺満智子先生のレクチャーです。

日本古来から伝わり、近代においては国策として位置づけられた産業労働であった養蚕は、同時に人々の生活に根ざした文化そのものであり、また、そこに従事するのは皆女性であった、というような、養蚕を社会学的視点から研究されている方です。

素敵な紅色の紬でご登場の沢辺先生。

お話は非常にわかりやく、興味深い視点に富んでいて、もっと講義を聴いていたいな!というくらいでした。

今回のお話で私が驚いたのは、養蚕信仰という文化があること。全く知りませんでした。お蚕さま、なんて呼ぶくらいですから、確かに土着の文化として蚕を神様として大切に祀るという文化があっても不思議はありません。

沢辺先生は、こうした養蚕信仰について、研究されている方でもあります。先生の講義メモです。

世界に共通する女性による養蚕

このスライド。明治13年(1880年)とありますが、「皇国蚕之養育」と書いてあります。中央に座しているのはもちろん明治天皇。そのまわりに、蚕のお世話をしている女性たちが描かれています。

皇室と養蚕の歴史は明治に遡ります。現在でも、美智子皇后陛下が小石丸などの養蚕に従事されていますが、この絵は、宮中の官女が養蚕を行っている図で、皇后が養蚕を行ったという伝記(『日本書紀』巻第十四、雄略天皇、「天皇、后妃をして親ら桑こきて以て蚕事を勧めしむと欲す」)に基づき、皇后がこの作業を指揮し、天皇がそれを見守る形式で描かれています。(参照元下記記載)


※日本実業史博物館準備室旧蔵資料

天皇・皇后が自ら殖産興業の範を垂れるという意味があったと思われる絵だそうで、つまり、全国民に養蚕を奨励するという国策を後押しするような絵なのでしょうね。

養蚕をする美人画というのは江戸時代中期から沢山描かれていたそうで、この絵もその流れを汲むものだと言われています。

蚕と女性は切っても切れない縁があり、これは世界で見ても同様だそうで、例えば蚕の種を女性が眠る時に衣服の中に入れて体温で暖めていた、というような事象からも言えるそうです。

養蚕信仰〜おしらさま、金色姫〜

こちらの馬鳴菩薩(めみょうぼさつ)は、おしらさま信仰と言われる養蚕信仰の神様。馬に乗っている神様です。

沢辺先生曰く、養蚕と馬も切っても切れないものらしく、かつては、死んだ蚕は馬小屋に投げるとか、そういった風習があったのだそうです。

さて、茨城県つくば市にある蚕影(こかげ)神社は、全国の養蚕守護・蚕影信仰の総本山で、この社の縁起に、インドから伝来した「金色姫伝説」があり、金色姫が蚕に化し、筑波山の神が繭から糸を紡ぐことを教えてた、とされています。

こうした風土や文化に着目して研究されているのが沢辺先生の専門なのですね。

 

つづく。

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