日本染織文化振興会主催レクチャー:着物スタイリスト江木良彦さん&昭和村「からむし」について〜その②〜
染織文化講座、江木先生の講義の後は、
昭和村の生産者による「からむし」のお話です。
講義を担当して下さったのは、
奥会津昭和村振興公社の渡辺文弘さん。
たくさん資料を持ってきて下さいました。
皆さんは、「からむし織」って聞いたことがありますか?
そもそも「からむし」というのは、イラクサ科の多年生植物で、英名Ramie(ラミー)、日本名でも苧麻(ちょま)と呼ばれたりするいわゆる麻の一種です。
これが、渡辺さんが持参して下さった「からむし」。
わかりにくいですね(汗)。高さは、2m50㎝ほどにもなる背の高い草で、この時期がまさに刈取りの最盛期だそうです。この茎の部分が、麻になります。渡辺さんがいらした奥会津の昭和村は、からむしの産地で渡辺さんご自身もからむし農家です。
麻は総称であって、例えば正倉院宝物である正倉院裂の8割がからむしの草の皮の繊維で作られた織物だそうで、古代からからむしは「かげそ」といって上等品でした。
からむしから作られる極上品の糸の多くは、昔から越後に出荷され、越後上布になります。一方、40年頃前からからむしの産地でも織物を自分たちで作ろうということから「からむし織」という織物が誕生したのだそうで、「からむし織」自体は非常に歴史が浅いものだ、とおっしゃられていました。
細い糸から織りなす繊細な織物で美しいですね。
越後上布の類いとは、一線を画しますが、お値段も着尺は100万を超えてきます。
染めは新潟に出しているそうです。
これの元になっている手績みの糸(てうみ)がこちらです。
左の太い糸は帯用。右の細い方が着尺用です。
こちらは着尺ですが、7段に一本手績みの細い糸が挟まれこうした綺麗な段が織り出されていきます。濃く見える糸が手績みの糸でそれ以外は機械紡績で紡いだ糸を使用しているそうです。
夏に収穫されたからむしは、苧引き(おひき)と呼ばれる粗皮をはぎ、繊維質だけを取り出す工程に入ります。ここで苧引き(おひき)されたからむしを陰干ししたものはまるで真珠のように白くキラキラと輝きを持っているそうです。
このように束にされ、ランク別に鑑定されます。
からむしは虫がつかないので、この状態で、半永久的に保存できるそうです。すごいですね。
この3尺8寸の束で100匁。2束で無地の着物1反が織れるくらいだそうです。
重要無形文化財である越後上布の原材料となる「からむし」ですから、生産をしている昭和村のからむし農家の皆さんが、後継者を育て技術を継承していくことが、非常に重要です。現在5−60件あまりのからむし農家の存続が織物の未来を左右します。が、しかし、現在、からむし農家の平均年齢はなんと80歳!このまま放っておけば、私たちの憧れの越後上布も本当に美術館でしか観られなくなってしまうかもしれません。
この日、講義に来て下さった渡辺さんは、お若く、今後この課題を打ち破っていくリーダーとなられる方だと思うので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
私たちもこうして学ぶことで、少しでも、きものを着る方を増やし、農家の皆さんに貢献できるよう努力しないといけませんね。
あこや
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