神無月の京都旅~その⑤~下出蒔絵司所 Trip to Kyoto


根付館を後にして、次に向かったのは蒔絵の工房、下出蒔絵司所

この日訪れた京都迎賓館の桐の間にあった漆の座椅子の背もたれに五七の桐を蒔絵で施した先生が、こちらの下出祐太郎先生になります。


下出先生は、この下出蒔絵司所の三代目。伝統工芸士であり、京都産業大学名誉教授も務められています。とーっても気さくで冗談がお上手な先生で、レクチャーもとても面白かった!なにより蒔絵の気の遠くなるような制作工程のお話は興味深く、職人さんのご苦労と出来上がった作品の素晴らしさに驚きました。

レクチャーメモは、私の聞いて理解した内容を記載しているので、厳密には正確でない情報や表現などが含まれている可能性もありますので、ご了承くださいませ!

蒔絵とは…

蒔絵は、平安時代に確立された日本独自の漆工芸技術で、京都が中心となって発達、京蒔絵という名で全国に広がっていきました。

【蒔絵の伝統技法(基本の3つ)】
 ・平蒔絵:漆で文様を描き、金粉・銀粉等を蒔き仕上げたもの
 ・高蒔絵:文様を漆あるいは木炭の粉や錫粉・銀粉・漆鯖などで盛り上げ、
      その上から金粉等を蒔いて仕上げる
 ・研出蒔絵:漆で描いた文様に粗い金粉等を蒔き、その上に薄く漆で塗り固
       め、さらに全面に黒漆で塗り固め、木炭を使って研ぎ出して
       磨き上げる

これらの技法をベースに、それぞれをかけ合わせたり、使用する金粉等の種類や粗さの50~100種の違いを加味し、更に漆の調合を加味していくと、その技法は数限りがありません。

さらに、螺鈿や卵殻などを使った装飾など、時代時代に考案された技巧によって表現方法は無限です。

先生が見せてくださった置目と言われる文様の下絵(デザイン)です。


同じデザインでも、その技法によって、仕上がりが多様になることを見せてくださいました!


これ、すごくないですか!?
同じパターンでも仕上げが異なるとこれだけ別物になります。写真だと見にくくて申し訳ないのですが、全て違うんです。

蒔絵の自由自在な表現方法に驚きました~~。

さて、こちらはというと。。。


こちらの作品は、京都迎賓館の宿泊施設の中にある飾り台の装飾と同じものです。この飾り台は、来賓の方しか見ることが出来ないエリアにあるので、見たい方は下出蒔絵司所のHPを見てください。トップページのヘッダーの写真に出てきます。とても美しいです。

この波模様に使われている丸い粒粒。こちらはなんとプラチナ粉。飾り台全体としては1キロ(7万粒)のプラチナ粉が使われているそうです。予算とにらめっこしながらの制作ではあったそうですが、銀粉では完成当初は美しいものの、経年変化で色が焼けて行ってしまうため、プラチナ粉が採用されたのだそうです。

プラチナは金に比べて、比重が重く、硬い、つまり加工がしにくくて量が少なく加えて高価なため、金粉屋さん(そういう専門家がいらっしゃるんですね!)と相談して制作したそうです。結果、1.5㎜の針金状のプラチナを1.5㎜の薄さで切断してプレスし、この直径2~3㎜のプラチナの平目粉(金属をやすりで削り出した微粉末をプレスして扁平にしたもの)の特注品が完成しました。

沢山の専門家の皆さんとのコラボレーションで素晴らしい飾り台が完成したのですね。

さて工房の2階へお邪魔します。


2階は、このような作業場になっていました。蒔絵を学ぶ学生さんたちが、先生の工房ではたくさん働いていらっしゃいます。女性ばかりなのに驚きましたが、近年こうした手仕事に従事したいと志願してくる方は女性が多いのだそうです。皆さん、がんばって!


こちらの棚は、漆を乾燥させる専用の棚だそうです。
漆というのは、ある条件を満たすと表面が固まるという不思議な性質を持っている素材で、ゆえに、様々な装飾加工を表面に施すことが容易な素材なんですね。おもしろい!


これは漆器に金粉で唐草模様の蒔絵を施しているところですが、こうして真綿に金粉を含ませ、上からポンポンとはたきながらくっきりとした金の文様が付くまで繰り返し作業をされるそうです。


工房の扉のノブも蒔絵でした!


こちらの扉も蒔絵の装飾が施されててすごい~。
現代の店舗や住居のインテリア装飾にも蒔絵は利用されているのですね。案外身近なところにあるかもしれません。

このほかにも、沢山お話を伺ったのですが、メモとしてはここまでにさせていただきます!

最後にこんな素敵なお土産を頂戴しました~。


メダカがポイント。先生のおしるし?だそうです!
裏には、、、


「祐」と先生のお名前が蒔絵で。

大切に使わせていただきます!
下出先生、ありがとうございました。


つづく



あこや

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