葉月 唐織勉強会 KARAORI
八月に入りました。
オリンピックがスタートして、コロナ感染も再び急増していて、なかなか複雑な気持ちの夏休み、皆様いかがお過ごしですか?
私はというと、朔日詣りに陽射しの強いなか、行ってきました。
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境内は日陰がなく、少し立っているだけでもジリジリと太陽が照りつけるのを感じますが、1日ということもあって、とてもたくさんの方々がお詣りされていました。
不思議だったのが、こちらの藤棚に、綺麗に藤の花が咲いていたこと。
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季節外れに咲いてしまったのか、それとも、この時期咲く品種なのかは、わかりませんが、藤棚の下に入ると日陰になってホッとします。
日傘も意味をなさないくらいの太陽。皆さま、どうぞ熱中症にはお気をつけくださいね。
お詣りをしてから、今日は唐織の勉強会へ行ってきました。
唐織って皆さん、聞いたことありますか?
「あぁ、あの豪華な帯ね」
「あの刺繍みたいな帯」
そうそう。立体感のある豪華な帯でお好きな方も多いかもしれません。
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とどーんと、中央に鎮座するのが能装束「松藤帆文様」。ものすごく豪華なお衣装です。こちらは、国立博物館に所蔵されている「金地松帆模様唐織」の写しで、そこに藤の柄を足した装束になります。制作したのは、西陣は大徳寺紫野にある織紋意匠鈴木。鈴木では、唐織をはじめとする帯地の他、宗教用裂地、額装品などの制作をされています。今日は、この鈴木さんがレクチャーをしてくださいました。
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簡単ではありますが、レクチャーメモです。
◼️唐織とは
唐織という言葉には、二つの意味があり、一つは、中世鎌倉時代に唐(中国)から入ってきた染織品を総称して唐織と呼ぶ。もう一つは、能衣裳で、女性役の一番位の高い役が着る衣装が唐織である。
ここからもわかるように、唐織の歴史は能とともにあります。
能は、歴史の授業で習った通り、観阿弥、世阿弥親子によって確立されていった芸術ですが、もともと観阿弥というのは猿楽師で、たいそうな衣装を着ていたわけではなかったのが、徐々に将軍家に寵愛され、小袖を授かったことが能衣裳のルーツと言われているそうです。
当時の豪華絢爛な小袖というのは、繍箔の鮮やかな衣装で、大変に労力もかかるものであったことから、これを量産するために開発されたのが唐織なのだそう。「まるで刺繍をしているかのように見える」ものを量産したのが唐織の始まりです。
その特徴は、刺繍の様に立体的であること、衣裳として使用するため極力まで軽くするための工夫がされていること。
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確かに、刺繍みたいですよね〜!このぷっくりした立体的なのがザ・唐織ですよね!
◼️構造からみる唐織
なんの織物でもそうですが、この構造の話を口頭だけで理解するのも難儀ですが、それを書き説明するのも難しい…。詳しくは、たくさん文献もありますし、ネットにも詳しい説明が溢れていますのでぜひ参照にしつつ、読んでみてください。
唐織の地組織は三枚綾がベース。三枚綾というのは、いわゆる錦のこと。綾織は、三原組織の一つですよ!授業で習いましたね。(あこやきもの教室の生徒さんに投げかけています笑)生地の表面に斜めに糸が走っている様に見えるのが綾織の特徴です。
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錦は経て3㎝幅に、緯糸が50-60本入ってくるのに対して、唐織は80本を越えてくるために、糸をより細くする必要があり、それが結果的に軽さをうむのだそうです。
この織地の上に、様々な色で模様を織りだしていきます。(絵緯、胴緯)この時、絵緯糸を刺繍のように浮かして模様を表現していくことにより、飛び出た様な文様に見えるわけです。
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この柄を織り出す糸には、撚りの少ない糸を用いることにより、光沢と立体感が出るのだそうです。右にある染められた糸が胴緯と言われる柄を作る糸。
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よく見ると、撚りがほとんどかかっていないのが分かります。
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◼️色入り、色なし
唐織の能衣裳が、女性役の上着装束というのは、冒頭で言いましたが、赤(色入り)と赤なし(色なし)と言われる2種あって、色入りは真っ赤な色が入った若い女性役の衣装、そして色なしは老女の衣装と使い分けられるのだそうです。
ちなみに、こちらが東京国立博物館にある「松帆模様唐織」。
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これを模して、鈴木さんが制作されたものにはピンク色の藤が加えられ、「松藤帆模様」となったわけです。
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このピンク色、色入りのつもりで制作したものの、本来の能衣裳の色入りとは、真っ赤であるのが普通で、この松藤帆模様唐織が制作された際、専門家の方に赤なしで制作したんですね、と言われ、自分たちはこれまで博物館にある色が褪色した赤入り能衣裳しか見ていなかったことに気づいた、というエピソードを伺い、なるほどな、と思いました。
鈴木さんは、天然染料で染めた糸を使用した唐織を今でも手がけているそうです。
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こちらの袋帯も。藤が巨大に織り出されています。可愛い。
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こちらも。豪華〜〜!
なんたる目の保養、眼福タイムでした。
唐織の帯をしめることって、なかなかなくなってしまったけれども、やはりここぞという時に存在感があるし、何より、私はこの刺繍の様なぷっくり立体感の大胆な柄ゆきの帯が好きです!
なかなか、唐織についてもじっくり知る機会がなかったのでとても勉強になりました。ありがとうございました!
あこや
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