染織文化講座「産地研修 丹後」民谷螺鈿~その⑦~

産地研修 丹後の旅もいよいよ大詰め。

車は美しい丹後の海沿いを走り最終目的地へ。最後に我々が訪れたのが、民谷螺鈿さんです。

立派な日本家屋~!
こちらで、螺鈿織の制作過程などのレクチャーを受けました。
そもそも、螺鈿織自体を知らなかった私…。一体きものに螺鈿てどういうこと??と不思議に思っていました。
そんな私の目の前に現れたのがこちら!!

総螺鈿の打掛、どーーーん!!!!

こ、これは…?!
もしかして、螺鈿がくっついて硬いの?と思いましたが(笑)ちゃんした打掛になっている…つまり、螺鈿が織り込んであるんですね。
これは一体どうなっているんだ!

近くで見ますと、まるで描いたようですがすべて織。そして螺鈿の輝きがわかります。鳳凰から全ての図柄が総螺鈿なのです!

ひゃー!
七色の輝きが見事織物で再現されていますね。貝のカルシウムは、光沢が年月を重ねても経年変化がなく、古墳の貝塚などを見てもわかるように、ほぼ永久に残ると言われています。つまり、何百年もたつと、このきものも絹部分の劣化が進み、貝部分は美しいままという可能性があるそうです。

こちらが私たちにこの日レクチャーしてくださった民谷螺鈿の民谷社長です。お話は非常にパワフル且つ情熱を感じました。後ほど詳しく触れますが、ご自分達の技術や作品を積極的に海外に販売し高い評価を得られています。

こちらの美しい貝殻達。これが螺鈿の材料になるのです。夜光貝、サザエ、メキシコアワビ、日本アワビ、黒蝶貝等々(約6種類)の表面を削ると出てくる真珠層が螺鈿になっていくのです。1枚の貝から螺鈿の材料となる0.1-0.2mmの真珠層は少量しか採取できないので、想像しただけでも材料の確保は気が遠くなる作業ですね。

私は全く知らなかったのですが、その昔、螺鈿を使った帯やきもの、というのは一世を風靡した時代があったそうです。その頃の多くのものは、螺鈿装飾が施された帯やきものだったそうで、「織らないでください!」と呉服屋さんに言われるなんてこともあったとか。

そんな中、民谷社長のお父様である民谷勝一郎氏がきものの帯に螺鈿を織り込む技術を研究、螺鈿織を開発されたそうです。

それでは、螺鈿織の出来るまでを見ていきましょう。

①図柄のデザイン
はじめに、螺鈿で表現したい部分のデザインを起こし、そのデザインにそって螺鈿を貼付けていきます。

これは、特殊なフィルムを挟んだ強度の高い和紙に銀を押して貝の薄い板を切って貼っていくのです。

そうして出来た和紙を「引きばく」と呼ばれる西陣織の技術(和紙の上に漆をして金等を貼り細かく裁断し織り込む技術)を使用し、細く細く裁断していきます。その時、そば切り機を改良した機械で切るそうなのですが、かなり技術が要される作業で、京都のある切り屋さんで切ってもらっているそうです。

切った状態のものがこちら。

和紙の上下部は切らずに柄ゆきの部分が細く細く裁断されているのがわかりますね。

こ、細かい!

②織り
職人さんが裁断された和紙を織り込んでいく作業がこちら。

一本を切って、柄が崩れないように横糸のように通し、織っていきます。

裏面が見えている状態で織れていくので、柄が綺麗に出ているかどうか、逐一チェックしながら慎重に織っていきます。ジャガード織機を使用しています。

機械の下に鏡がついていてこれに表側の柄が写るようになっており、鏡を見ながら作業をしているそうです。1寸に80前後の和紙が入るそうです。帯のお太鼓部分を織り上げるのに平均4−5時間かかるため、2日に1本のペースぐらいが限界とのこと。

さぁ、こちらは何だと思いますか?
これも引きばくの技術を用いて裁断した新素材のテキスタイルです。左はゴールドの布、右はクロコ型押しの布。

2006年に京都商工会議所パリとベルギーで開催されたプルミエールエキシビジョンというイベントに日本代表として参画。その際、先ほどのそう螺鈿の打ち掛けなども展示し、高い技術力に評判がたち、世界13社の匠の技仁選出。2007年には丹後展というイベントを開催しその後毎年ヨーロッパでのこうしたイベントに参加されているそうです。こうした活動を契機に、海外のトップブランドからの受注が増えているそう!

これは、牛皮を引きばくの技術で織り込んだテキスタイル。
見た目以上に軽くて柔らかく、驚きました。きものだけではない、ファッション全体に技術が必要とされ商品を輸出できていること、素晴らしいですね。バッグやネクタイなどの小物も製作されていました。

海外からのインターン生なども受け入れているそうで、この帯は北欧からのデザインの学生とのコラボレーションで製作したものだそうです。民谷螺鈿の特色は、貝の硬質感を生かして、自然の貝の輝きを再現すること。この帯も間近で見ると飛び出てくる様な不思議なデザインでした。

最後に民谷社長とパチリ!


今回の研修、私が洋服で参加していたのがバレちゃいました。
次回は、他の参加者の方を見習い、遠くても、汚れる可能性があっても、なるべくきもので参加しよう!(笑)
今回の研修をご一緒したお仲間のきもの姿のご紹介もこれでラストです!

研修でご一緒するといつも気さくにお話ししてくださる、みゆきさんです☆
グレーの紬に綿の縞が効いた帯のコーディネート。
小倉織の築城則子さんがやっているshimashimaで布から購入し作った帯だそうですよ!かわいい!

あこや

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