映画「細雪」を観る A movie”Sasameyuki”

映画「細雪」

私の大好きな映画の1つに市川崑監督の「細雪」(1983年制作)があります。何度かこのブログでも谷崎潤一郎氏の原作「細雪」や映画化されたことに触れたことがありますが、なんだかこの世界観が好きで繰り返し観てしまう映画です。

細雪はこれまで何度か映画化されており、舞台に至ってはいまだに毎年公演されているほど、根強い人気。映画の中では、ダントツに市川監督の作品が好きです。

原作と全く同じではないのですが、映画として脚色された部分や監督が描く細雪の世界観がとても好き。そして何より、大阪の船場を舞台に、きものが日常だった頃の四姉妹の生活風景に心を奪われます。一時は栄華を極めた商家に生まれた四姉妹のきものですから、良いものを着ていたに違いなく、映画の中でも豪華なきものをたくさん観ることができます。きもの衣装だけで1億円近い予算が投入された、何かの記事で読んだことがあります。

時代考証がどれだけ忠実に行われているかはわからないので、断言は出来ませんが、現実に近しい状態で描かれていると仮定すると、大変興味深いシーンが満載です。

 

現代のきものはシンプルすぎる

この映画を観ていて、きものの醍醐味はなんだろうと考えさせられます。上流階級の女性達のきものであることが前提ですが、とにかく、きものも帯も目いっぱいそれぞれが主張していて、それが良家の女性達が着ることによって見事に1つに調和するという絢爛の美。

これに比べると、現代のきものは、随分とシンプルになったものだなと思います。当然生活様式や洋服中心の美意識が生まれている中で、きものだけが戦前のままであるはずがありません。衣服とは日々変化し、時代に溶け込んでいくものですから。時代の迫力というのか、きものが持つ力強さや生き生きとした感覚の中身が、戦前と現代では大きく変化し、それぞれの時代に生きる私達に受け入れられているわけですね。

 

ファッションは時代を映す

ファッションとは、自己表現の1つでもありますが、その時代や風景に自然にマッチしていくように変化していくものです。背景に溶け込んでいることで自然な調和を生み美しいと感じることが出来る。

細雪の時代、谷崎が表現した陰影礼賛の美の中に、あの絢爛豪華なきものたちは生き生きと溶け込み、美しさを爆発させています。嵯峨野の桜、箕面の強烈な紅葉、絢爛なきものをまとう四姉妹がたたずむ風景は、どこを切り取っても違和感なく美しい。

翻って、今の時代にあの装いがマッチする景色がどれほどあるのか。悔しいけれど、ほとんどない。私が暮らす東京は、軽やかで洗練された景色に囲まれています。その風景に無理なく溶け込むきものが消費者に違和感なく受け入れられる。だからこそ、私みたいな人には、シンプルすぎるな、という感想をもたらすのかも知れません。

 

私自身の試み

私も東京生まれの東京育ちです。それもかなりの都会っ子(笑)。先述したような、風景に溶け込むきものの美しさを十分理解しつつ、自分の個性や好みというところで、きものの醍醐味とうたわれる強烈な色彩やせめぎあう華美な世界を上手に取り入れて、「あこや好み」を表現していけたらと思っています。

もっと多くのきもの文化に触れて、自分を高めたい!自分の目の力を養いたい!自分の感性と照らし合わせた時にどんな反応が起こるかを、自分自身でも見てみたい。そんな楽しみがありますね。

 

 

あこや

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