細雪のきもの Kimono in Makioka Sisters


谷崎潤一郎の「細雪」が大好きなことは、このブログでも時折書いていますが、
先日、市川崑監督の映画「細雪」のきもの衣装について書かれた本を購入しました。


かなり古い本なので、古本屋さんで購入。

細雪は、これまで3度映画化され、市川崑監督作品が80年代に制作されたのが最後です。その当時ですら、大正の頃の関西におけるきものを再現することは大変にハードルが高い作業であり、100を超えるきもの衣装をほぼ白生地から制作するという、聞いただけでも気が遠くなりそうな衣装制作について、まとめられた本が、この「細雪のきもの」です。

実際、作品の中で四姉妹が着た着物に加え、制作の参考にされたという、谷崎夫人の松子さん所蔵のきものなども含まれ、なんとも見ごたえのある一冊です。また、各俳優陣からの衣装に対するエッセイや、宮尾登美子、谷崎松子、佐久間良子、衣装制作を担当した三松社長による鼎談もなかなか面白いものでした。

映画をご覧になった方であれば、お分かりになるかと思いますが、現代の呉服屋さんでは決して見ることはできない昔の日本の艶やかなきものがふんだんに登場します。平安朝という表現が本の中で何度も出てきますが、色、柄、どれをとっても絢爛豪華。陰翳礼讃を象徴していて、昨今のきものとは一線を画します。

きものは衣服=ファッションなので、時代を反映するものですから、当時のきものと現代のきものが同じはずもなく比べるのも無意味です。とはいえ、現代でも言われる西の「はんなり」呉服のパワーには驚かされます。

個人的には、松子夫人が谷崎から「お前は紬や江戸小紋を着ないでくれ、似合わん」と言われたというエピソードが好きでした(笑)。谷崎はとにかく友禅をはじめとする京都のきもの文化を愛していて、東京の地味な色合いのきものは、船場育ちの松子夫人には似合わない、と。当時西の方々は大島紬を寝巻にしていたんですってw

きものって、やっぱりそれぞれに似合うもの似合わないものがあるんです。それは色や柄ということだけではなく、産地ものであればその土地の風土だったり、素材がその当人の育ちや生き様にそぐわないものってあると思う。自分の例を出して恐縮なんですが、私は、長年、宮古上布にあこがれていて、実際宮古島まで勉強に行ったりもしました。でもいつも、羽織らせてもらう度に、なんだか違う、という感覚。そう、私は宮古上布が似合わない~。なぜなのかしら、と原因はわからないんですが、あの藍と独特のテカリ(艶)、布の張り感、すべてがフィットしないんです。残念だけど涙。

谷崎が松子夫人の似合うもの似合わないものを言い当てている感じは、とっても鋭いなと思いながら読んでいました。

ぜひ、お手に取るチャンスがあれば、読んでみてくださいね。
きもの文化のすばらしさを再認識できます!


あこや

Leave a Reply

CAPTCHA