色留って? All about Irotome

日頃から、友人や生徒さんからきものに関する相談を受けることが多い私ですが、先日友人から色留について相談がありました。

色留。。。かぁ。。。

ああ、そういえば、今まであんまりきちんと色留について考えたことが無かったなぁ。

そう、私にとっては、結構遠い存在だった色留。だって、これまで着なくちゃいけない場面があったわけでもなく、いつかのために、と誂えておこうリストの上位に入ってくるものでも私個人としてはなかったので、割と未知なるものでした。でも、これはいい機会だし!と思い、色留について考えてみました。

「妹の結婚式に色留で出席したい。どこでどんなものを買えばいい?」

友人の質問は、これでした。

●結婚式に色留という装い TPOから考える
妹さんの結婚式に色留という装いを選ばれたことは、とっても素敵なこと。きものの格でいうと、第一礼装の黒留に対して、色留は準礼装といわれる黒留に次ぐ格。妹さんの結婚式に出席する姉として、格という意味においては結婚披露宴という場にふさわしい完璧な正装姿と言えます。

●彼女のデモグラフィック(属性)から考える
30代半ばの友人。既に結婚していて、1児の母。仕事とママを両立するも、常に自分ケアを怠らない美人さん。とても華やかな方です。色留は、未婚、既婚に問わず着られるものなのでそこはオッケー。あとは、こういった彼女に似合う色留がどんなものなのか。

相談を受けた頃、私はちょうど京都へ行く機会があったので、自分の勉強にもなるな、といくつかのきもの屋さんを回り、色留を見せてもらいました。結婚式までには、ゼロから誂えているほどの時間はないので、あるものの中から選ぶということになります。きものはご縁ですから、その時に出会い、ピンと来たものを、というその直感が大事ですよね。

とはいえ、何軒か回ってみての感想としては。。。

「選択肢があまり無いんだなぁ」

ということでした。

今回巡ったお店は、それぞれ個性もある老舗やメジャーなお店でしたので、一つ一つのクオリティは確かに良いものばかり。ですが、色留ニーズが基本的にあまりないんでしょうね。常時お店にはたくさん置いていないため、それぞれで見られる色留はせいぜい2、3点。
※デパートに行けばもっとあると思います

色留なんかを作る方は前もってご準備される方が多い、ということなのかもしれませんが、訪問着や付け下げ、小紋などに比べて圧倒的に選択肢は少ない、という印象でした。

次に感じたことは、

「どれも、地味〜〜!」

これは、主に、地色を指しています。グレー、落ち着いた藤色、ベージュ、この辺りの色味がすごく多かったです。お店の方に聞くと、やはりある程度年配の方の需要が多いので、こういった色味がどうしても多くなるというご説明でした。

確かに、30代で色留を買おうという方は全体から言えば少ないかもしれません。

また、色留は何枚も買うものではないので、それこそ長ーく着られるものという視点、上品さが何よりも大切ですから控えめな美しさという視点からも、こうした落ち着いた色味が主流になっているのだと思います。
※もちろん色味だけで地味と安易に判断してはいけません。色味は地味でも光沢感などで非常に華やかな存在感を放つものもあるからです。

●色留はいつ着る??
色留の出番としては、やはり結婚式に代表される式典、園遊会、表彰式、オフィシャルなお茶会といった改まった場面が主になります。

色留には紋を付けますが、5つ紋付などは、天皇陛下にお会いする際にも着られるような類のもの。着ていく先が限定されるので、着回し重視しがちな若い方は、なかなか手が出ないのではないでしょうか。また、お高いですしね。おのずとターゲット層の年齢が高くなってくる。この点からも、作り手や売り手が地味目な地色に偏っていくのは仕方ないことかと思います。

友人はまだ若く、しかも華やかな方。多少地味目の色味を選んだとしても、若々しく着られるとは思いながらも、ご本人からのリクエストも華やかな色味、可愛らしいものがいい、ということだったので、そういう意味ではなかなかピンと来るものには出会えなかったですね。

でも、帯などコーディネート次第できものはいかようにでも華やかに装うことが出来るので、一概に地味色がつまらないな、ということではないのですが、そう理解していても、私たち世代にとって、これだ!というものはなかなか見つけることは難しかったです。

●訪問着という選択
華やかさを重視するなら、色留を一旦置いて、訪問着で結婚式に出席するという手もあります。彼女はまだ30代ですし、ご家族との調和を崩さないのであれば、選択肢は格段にひろがります。結婚式以外での着回しも、ぐっと色留よりも幅が広がります。

●色留の魅力
黒留や色留を第一礼装、準礼装と置いているあたりが、「型」好きの日本人ならではのことだと思うのです。実際の衣服としての華やかさ、ということよりも、「こういう場では、色留を着るのである」という美学が働いているのだと思うんですね。そこが、おそらく、色留等の礼装を着ることの魅力なんだと思いました。よって、色留然としたものが、市場からは求められるのだと思いました。

今回は、友人からの相談から、こうして様々な色留を見る機会が出来てとても勉強になりました。もし、私が色留を作るなら、やはり、余裕を持ってゼロから作ってみたいなぁ。贅沢なことですが♪貴重な機会をもらいました!ありがとう!

●色留 番外編
今回、いろんな色留を見ていて、描かれている柄が結構面白いな、と思うことがありました。

基本的におめでたい装いですから、五穀豊穣にちなんで、でっかい稲穂がどーん!と描かれていたり(笑)、いっぱいお宝を載せた宝船が大きく刺繍でどすんとあったり、そういう意味では、斬新〜と思わず関心してしまった場面もありました。

 

あこや

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