勝山健史 織物展「美の元」へ ~その③~ a short trip to Kyoto

勝山さんのお話会当日。


本日も京都は快晴!
会場である京都国際会館の庭から本館を撮影してみました。
存在感がすごい建築物です。


白鳥さんがいました。最近パートナーが死んじゃったそうです。かわいそう。池には立派な鯉もたくさんいました。鯉さんと仲良くしてほしいものです。

さて、会場へまいりましょう!

本館5階のこちらのお部屋がトークイベントの会場です。
今日はどんなお話が聞けるのか、楽しみです♪

こちらの凛とした素敵な女性が、今日のお話会のゲストである株式会社 松鶴堂さんの城山好美さんです。


この松鶴堂さんは、京都国立博物館内にあり、博物館の文化財の修復を主にされており、城山さんはその中で染織の専門家です。これだけ聞いてもすごい方ですよねぇ。なかなか普段の生活の中でお目にかかることは出来ない職業の方ではないでしょうか。貴重な機会にお邪魔出来てワクワク♪簡単ではありますが、お話会の内容をまとめてみましたので、ぜひご一読いただけたら嬉しいです!

■勝山さんと城山さんとの縁

城山さんは、文化財修復の中でも染織部門で活躍されており、桃山などの文化財の修復用生地で勝山さんの絹布を使用しているのだそうです。

文化財の修復は、文化庁が指定する修理業者が担うことになっており、松鶴堂さんはその指定を受けた会社です。文化財は、その保存が計画されるとそれに応じた修復に必要な材料選びが始まります。

修復作業は、所有者や専門家を交え何度も協議をしながら進められます。例えば、所有者である博物館が、その文化財を平置き展示したいと考えているか吊るして展示したいか、といった目的に合わせても修復強度が変わってくるので、そのあたりも計画に含めてプラニングされるんだそう!凄いですね!

■桃山 肩裾小袖 表地の場合

例えば、桃山時代の代表的な肩裾小袖の表地の修復の場合、対象の絹に下記の様な特徴があります。

  • しなやかな薄地の平織絹
  • 経年や技法などで生地は脆弱化
  • 肩山や裾山、その他箇所などに大小の欠失や裂けが点在

この様な場合、風合いの維持と状態の安定化を目的に、
身頃・袖など、各部の生地のそれぞれ全体に絹を縫い補強を行う、修復を施すのだそうです。

この様に、修復の意味合いとしては、「復元」よりも「補強」を目的とした絹づくり、つまり、支えるための糸質に相応しい絹糸づくりが不可欠なわけです。

■勝山さんの絹糸

素人的に考えがちなのは、当時の糸づくりとなるべく同じ環境で再現された糸が修復には良いのではないか、と盲目的に考えがちですが、現場の皆さんは必ずしもそうではないようです。

勝山さん曰く、蚕の種類や桑の葉の質などにこだわる、ということもあるが、実は、糸の引き方や染織、トータルで考えてその文化財に合った糸を選ぶ必要がある、とのことで、城山さんも「組み合わせが大切」と指摘しています。

城山さんが勝山さんの研究所で見せてもらった、品種改良前の桑の葉を食べた蚕の絹糸は、品種改良後の桑の葉を食べた蚕の糸と比べて、青光りしていてとても美しかったのだそうです。なによりも美しいかどうか、ということが非常に重要である、という言葉は、とっても印象に残りました。

■文化庁の支援強化の動き

これまで、なかなか修復素材の糸をゼロから作って検討するということは資金的にもなかなか難しかったようですが、近年では文化庁により支援強化の動きもあり、修復用の絹布を勝山さんの研究所に依頼することが出来るようになったそう。

それは結果的に、糸づくりから修復まで一貫した作業が出来ることであり、それによって当時の製作技法が明らかになることがある、というのは意義深いですね。

強度を補うための糸は、文化財を傷めないように
・太すぎず
・柔らかめで
・生地になじむふんわりした糸
等に留意して選び、糸を入れすぎず糸の入れ方にも工夫した上で作業を行うのだそうです。緊張する作業ですね。。。恐!

勝山さんにお願いする際は、文化財が軽くておおらかで非常に薄いものの場合が多いとのこと!勝山さんの繊細な糸の出番!というわけですね!素晴らしい!

実際の修復用絹布を見ながら

最後に、城山さんが実際の修復用の絹布を見せてくださりながら解説をしてくださいました。


この朱色の生地は江戸時代の反物の一部。


写真だと見にくいのですが、この白い生地が修復用の絹布。一枚(左)は非常に薄く透けるような軽やかな感じ、もう一方(右)は糸目が細かくしっかりとした硬めの生地。


手前の絹布がより強度が高いタイプですが、それぞれの補強度合いによって裏当てする絹布を選択し、縫い付け方も元の文化財を傷めないようにそれぞれに合ったやり方が施されます。

最後に、、、

勝山さん曰く、普段の着物や帯づくりとこの修復用絹布の製作は全く異なる作業、ただ、この修復という仕事を通して、昔のことをよくよく調べるようになったのと同時に、昔のような美しい綺麗な織物がつくりたくなった、と、きものづくりにも刺激が多い作業と語ります。

これまで蚕の種類にこだわりまくった時期もあったけれども、そういった時期を経て、今は糸の引き方や乾燥のさせ方=糸の整え方にこだわるようになってきたのだそう。「糸の整え方」素敵な言葉ですね。

お話会に伺って、これからの勝山さんの作品作りがますます楽しみになりましたし、文化財修復というジャンルにも興味が湧いてきました。これからは博物館で見る文化財に新たな視点が加わった、豊かな勉強会となりました!

洛風林の麗子さん、勝山さん、そして松鶴堂の城山さん、貴重な機会をいただきありがとうございました!


あこや

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