秋の染織文化講座第3回目:友禅染 人間国宝 森口邦彦氏/小紋の形態変化についてby丸山伸彦氏(武蔵野大学)~その②~

森口邦彦先生の制作工程について、講義では文化庁が制作した映像をもとにご説明して下さいました。

Parisで過ごした青年時代
京都市立美術大学を出た後、フランス政府給費留学生として渡仏。パリ国立高等装飾美術学校で建築やグラフィックデザインを学ばれた森口先生。それはそれは、刺激的な数年間ではなかったかと想像します。

時代は1960年代。バウハウスの影響を強く受けた講師陣に師事し、当時活躍していた数多くのアーティストとの交流など、現在の森口先生に多大な影響を与えた時代と考えます。先生はご自身でも「正直日本に帰りたくなかった」と振り返ります。自己表現を作品に込めることの重要性を叩き込まれたのではないでしょうか。

その頃出会ったのが、画家バルテュス。先日大きな回顧展が上野でも開催されていましたが、彼との出会いにより、日本に戻り友禅の技術を継承し作品作りに従事した方が良い、というアドバイスを受け、日本に帰国されたそうです。

父 森口華弘の存在
森口先生は、重要無形文化財保持者である森口華弘(もりぐちかこう)を父も持つ友禅染めの家に生まれます。華弘といえば、森口流の蒔糊技法を創案。多彩の友禅をあえて淡色の濃淡だけで表すことに挑戦したことで有名です。森口邦彦先生は、このお父様の技術を受け継ぎ、自分のデザインにその技術を生かしながら、オリジナルな作風を完成させたと言えます。

出世作「千花」昭和44年の日本伝統工芸展 入賞作品

森口先生の制作工程
和紙インテリアアーティストの堀木えり子さんがお召しになっているこのきもの。このきものの制作工程が描かれた映像作品でした。

①草稿=デザイン
先生が最も重要視している作業の一つが草稿だそうです。A4の紙に着尺の絵を描き、その中に頭の中のデザインを定規を使って精密に描いていきます。
ひとつのきものを制作するのに、何十枚もの草稿を書くそうです。
先生の作品を買っていく美術館の中には、この草稿も含めて収蔵するところが少なくないそうです。

②下絵
草稿が終わりデザインが決定すると、化学青花液で実際のきものに下絵を描いていきます。ここからの作業は、才能ではなく根気が勝負とおっしゃる森口先生。

③糸目糊、色挿し
糸目糊にはゴム糊をを使用するそうです。糊を置いたら青花落としを行い、その後色をさすところに大豆とふのりを混ぜた豆汁(ごじる)を引きます。これをすることで、色が均等に染まるそうです。

色挿しでは、梔子(くちなし)を使って美しい黄色を色を重ねる二度挿しを行い、黄色く色挿しした三角形を糊ぶせします。

④蒔糊
(1)独自に調合した防染用の糊(のり)をうすく塗り、乾いたあと、こまかく砕きます。
(2)刷毛引きをし、水で濡らした布地の上に、この粒状の糊(のり)を蒔きます。
(3)水が乾き、糊(のり)がじゅうぶん付着したあと、そのうえに、染料を塗ります。
(4)水洗いすると、糊(のり)のあった部分だけが、こまかい点模様として残ります。

蒔糊をする森口先生。蒔糊の密度で点模様の雰囲気が変わるので、何度も蒔糊の量を調整されるそうです。

講義にお持ちくださったこの作品も、蒔糊の量で全体にグラデーションが生まれています。

 

⑤染める
森口先生は、黒が最も女性を美しく見せる色ではないかとおっしゃり、非常にこだわっている色とのこと。

三度黒と呼ばれる京黒染めの独特の技法で、漆黒色が美しく表現されるフランス産の植物染料を愛用されているそうです。

先生が考える工芸師とは/友禅とは
工芸師というのは、発想からアウトプットまで自ら責任を持ち、技術が表現と相関関係を持っていることが一番重要である。
友禅きものは、着装して美しい、そして衣桁(いこう)に掛けた時に一幅の絵のように美しく、鑑賞する世界として存在していなければならない。着ても、見ても美しいことが両立されていなければいけない。

なるほどー。

なるほどー!!
納得の講義でした。

先生、貴重なお話ありがとうございました!

 

あこや

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