京都&有松への旅ーSUZUSANー その⑥ A short trip to Kyoto & Arimatsu

有松から海外へーSUZUSANー

最初に訪れたのが、こちらのお店です。洋服なども販売しているようですが、一体ここは。。。

400年続く名古屋の有松鳴海絞りの技術を生かしながら、ドイツ・デュッセルドルフを拠点に展開するブランド「suzusan(スズサン)」さんのショップです。皆さんご存知でしたか?2012年以降はパリやミラノでコレクションを発表し、現在ではオートクチュールに絞りの生地を提供するほか、有名メゾンとのコラボレーションなど活躍の幅を広げています。

この上のお写真の方が、ドイツを拠点に活躍されているSUZUSANのデザイナー村瀬弘行さん。

元をたどれば、ここ、有松で代々絞りの下絵師を家業としていた村瀬家。このお店は、SUZUSANブランドの商品が置かれたショップになっていますが、この日お話を聞かせてくださったのは、自身も絞りの下絵師として仕事をしていたというデザイナー弘行さんのお父様。

いきなり、想像していた有松絞りの現場からイメージが違いすぎて驚きましたが、国内での販売活動には見切りをつけて(ポジティブな意味で)、海外に活路を見出す、職人さんたちのこれからの道ともいえる良い事例かもしれません。

店内を見渡すと、絞りの技法を用いて染められたストールや洋服、クッションカバーになんと照明のシェードまで!幅広い商品が販売されていました。価格帯もなかなか。海外では、日本よりも、絞りが魅力的に映るようだ、とおっしゃっておられた村瀬さん。ヨーロッパを中心に需要が高く、会社も成長を続けていらっしゃいます。そのおかげで日本で若い職人さんたちを雇い入れ、育てることが出来ている、と嬉しいお話をしてくださいました。

 

またもやSurrey Institute of Art and Design

デザイナーであるご子息の弘行さんが、イギリスの美術大学に進学したことが海外展開のきっかけとなったそうです。色々お話を聞いていたら、弘行さんが進学した大学は、ロンドン郊外にあるSurrey Institute of Art and Design(現:University of Creative Arts)。この大学は、以前もこのブログで触れたことがありますが、テキスタイルではとても有名な美大なのです。

私もロンドンに留学していた際、テキスタイルを学ぶ目的でSurreyに留学してきた日本人学生達に出会う機会がありましたが、日本の染織技術を持って学びに来ていた学生も多く、イギリスという場で自分の背景にある文化を深化させていた未来ある学生達だったと思います。

そう!先日青山八木さんで個展をされていた沖縄の染織家、上原美智子さんも!上原さんは、いわゆる学生の留学ではなく、Artist in Residence(アーティストが一定期間その場所に滞在して作品を作るという制度)で留学されていたのです。私が留学時代、フラットをシェアしていた友人もサリーの学生(彼女は写真専攻だったなー。懐かしい。)だったので、私はこの大学に勝手に親近感を覚えています。

 

分業ではなく全て自分たちで

さて、絞りの現場に移動してお話の続き。有松の絞りの現場は、京都友禅などと同じで完全分業制。村瀬さんは、生地にどういった絞りをしようかを決める下絵(型紙)職人さんでした。しかし、現在のSUZUSANでは、絞りから染めまで一貫して自社で制作されています。


※この染め場は、かつて銭湯だったんですって!

日本には、なんと100種以上もの絞りの技法があるんだそう。私達が良く目にする鹿の子絞りだけではないんです。絞りは世界中で見られる大変古典的な染織技法ですが、これだけの種類を誇るのは日本だけ。世界中が日本の絞りに魅了されていると村瀬さんはいいます。

しかしながら、皆さんもご存知の通り、有松の絞り産業もきもの産業の縮小に伴い、厳しい状況。有松一体で何百とあった職人や会社もいまや10数軒になってしまったそうです。

こうなってくると、自ずと分業は崩壊。SUZUSANのようにデザインから絞り、染めまでを全て自分のところで制作する職人さんが出てくるわけですね。村瀬さんは、その方が制作の現場としては正しいとおっしゃいます。

その昔、絞り需要が旺盛な時期は効率を求めて分業制に。しかし、その反面、どこかがなくなれば制作ができなくなるという大変脆弱なシステムであるという二面性を持ちます。且つ、職人の技術も蛸壺化し、視野が狭くなり、新しいものづくりが出来なくなる土壌を生む背景の1つになったのではないでしょうか。絞りに携わる産業人が自ら仕事の幅を狭めて来たと村瀬さんは言います。


※代用あおばな

SUZUSANでは、きものの絞りはもう、されないのだそうです。これも現実ですね。有松のニューウェーブと言いましょうか(笑)、有松絞りの進化系からご紹介しました!

さて、有松絞りの発祥については、もう少しお待ちください。

つづく。

 

あこや

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