御召今昔【矢代仁】を学ぶ−その③– The Study of OMESHI
★御召の種類
③風通御召(ふうつう)
経糸、緯糸とも表と裏で異なった色糸を使い、風通織りと言う特殊な二重組織で織った御召。表と裏の文様が反対の配色になるので、袋状に見え、その中を風が通るという意味で風通と言う。上品な中柄や小柄が多いので、観劇などにも活躍する。
この様に、表と裏に異なる文様が出来てくるのが風通御召の特徴で、この裏面を利用して単衣に向いているとも言われます。
昔、百貨店で、風通御召を初めて見たとき、どうして表と裏に別の柄が出てくるのかすごく驚いた記憶があります!
矢代仁さんには、風通御召の制作でもこれまたすごいものがあって、その名も「西陣風通御召330柄」。下記はその反物ですが、この様に、一つの反物の中に選りすぐりの330柄を織り込んだ一枚。
この330と言う柄を織り込んだこの御召を制作するためには、なんと!7万枚の紋紙が必要なんだとか!!
代々残された生地見本や図案から「紋図」と呼ばれる指図図案を起こし、そこから「紋紙」を作って、試し織りを行います。それぞれの柄が忠実に再現された後、330の柄と柄をつなぎ合わせて、約12メートルの反物に織り上げるのだそうです。高度な技術を要しますね。
④縞御召
縞柄を織り出した御召で、御召の代表格。先染めした2色以上の経糸で縞模様を作り、強い撚りを掛けた緯糸(御召緯)で織り上げたもので、粋な味と洒落感があります。御稽古着や街着としてきりりと着こなしたい一枚です。
縞の柄は無限。
元々御召の発祥は、縞縮緬と呼ばれていたものにあったという事でしたから、縞柄はいわば御召の古典ですかね。男性ものとして、最近は大変カラフルなものを増えていて、選択肢が豊富なようです。
⑤絣御召
絣柄を織り出した御召。糸を部分的に手で括り、防染して絣柄を織り上げるのは紬などと同じ技法ですが、御召特有のシボが現れている点が異なります。紫の矢絣は西陣御召の代表的ながらだそうです。
まさに、はいからさんです!
かつてこの色と柄は大流行し、若い女性の多くが袖を通しました。関東では銘仙が大流行していた時代。西の御召、東の銘仙などと言われたそうです。
絣お召も、こうしたカラフルなものもたくさんありました。元気になる色ですね。このピンクの絣お召は、とても可愛かった
さて、御召の一部ではありますが、一言で御召といっても、色んな種類がある事が御分かりいただけたでしょうか?上記で紹介した反物は全て矢代仁さんのものですから京都の御召ですね。
先述しておる通り、全国には御召に当たる織物が他にもあります。例えば、新潟県の「本塩沢」も実は御召。昭和51年に伝統工芸品の指定を受ける前は、「塩澤御召」と呼ばれていたそうです。また、山形県の置賜地方で大正時代から織られていた白鷹御召も御召の一つです。これらは、矢代仁さんの御召とは、また違った趣の織物で、使う強撚糸の種類も違ってきます。
こうして「御召」という言葉がカバーする範囲は非常に広域で、それが結局どんな織物なの?という漠然とした疑問に繋がっていたのかな、と思いました。
つづき。
あこや
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