ゆかたや三勝さん訪問 Yukataya Sankatsu


先日、ご縁があって1894年 明治27年創業の三勝株式会社さんにお邪魔しました。


三勝と書いて「さんかつ」と読みます。
皆さんも浴衣を着られるでしょう?三勝さんは創業時からずっと“ゆかたや”としてご商売をされていらっしゃいます。

三勝さんが創業されたころの時代を考えると、日本人と「ゆかた」は切っても切り離せないもの。寝る時に着る寝間着として、夏の家着として、外出着として、ゆかたは生活に欠かせないものでした。1日に何度も洗って清潔でさわやかなゆかたを常に着ている、気が付けばひと夏で着つぶしてしまうといった具合に、手ごろな値段で手に入り、生活必需品としての消耗品だったとも言えます。よく、古くなったゆかたを赤ちゃんのおしめにした、なんて話も、今ではドラマや映画の中の話でしょうか。

会社の1階が素敵なショールームになっていました。


ゆかたの反物がずらり!会社のスタッフの方も非常にお忙しそうで、もう来年の夏の準備で今は繁忙期なのだそう。

あまりにもたくさん種類があるので驚いていると、「種類は無限にあるんです」と、4代目天野半七社長が教えてくださいました。これまでの長い歴史で制作されたパターンがとんでもない種類あるんだとか!!見てみた~い!

■長板中形 人間国宝 清水幸太郎

三勝さんは、それこそ長板中形の人間国宝 清水幸太郎を専属職人として抱え、「長板中形なら三勝」と評されるほど、江戸時代から伝わる伝統技法を大切にものづくりをされておられます。長板中形って?と思われた方も多いと思いますが、染色技法のひとつです。
以前、長板中形の松原伸生先生の工房にお邪魔した時の記事を貼っておきますので、詳細はそちらで♪ここでは説明割愛しますね。
染織文化講座「唐桟織見学と長板中形染体験」~その④~ 長板中形染め体験
 染織文化講座「唐桟織見学と長板中形染体験」~その⑤~ 長板中形染め体験
 染織文化講座「唐桟織見学と長板中形染体験」~その⑥~ 長板中形染め体験
 染織文化講座「唐桟織見学と長板中形染体験」~その⑦~ 長板中形染め体験
 懐かしい~。


↑こちらの反物は、明治時代の清水幸太郎による長板中形の反物です。こちらもショールームに展示されています。(天井のライトが映りこんでしまって失礼)

とにかく、柄ゆきの細かいこと!長板中形は、伊勢型紙と呼ばれる型紙を白生地の上に置いて型染していくわけですが、伊勢型紙の精巧さと卓越した染の技術がなければ、これほど緻密な染は出来ないのですね~。現在では再現が難しい上、再現したとしても商品としては値段がとんでもないものになってしまう、と教えていただきました。

しかしながら、白と藍の染ものってなんだかイキな感じがして素敵です。


こちらも同様に明治の反物。ここにも記載がありますが、明治維新以降、武士の裃づくりに従事していた江戸小紋の職人が長板の加工へ転嫁していった、と。これは面白いですね。それゆえ、ここまでの繊細な型染が実現したのかな、とも思います。

そしてショールームの一角に衝撃コーナー発見!


これは、長板中形などで使用する伊勢型紙。破れたりしてもう使えなくなってしまったものが、展示されています。伊勢型紙は、柿渋を塗った和紙を加工した型地紙に模様を彫刻刀で彫っていくのですが、柄の配置が大胆であったり、緻密なパタンなどは、紗張りとよばれる技法で固定されます。絹の糸の網を漆で貼り合わせたものですが、つまりは非常に繊細。

水につけたり、何度も刷毛で糊を置いたりする間に簡単に破れてしまうのだそう。そうなったらもう使えない、どれだけ手間がかかって制作されたものでも写真のような状態に。三勝さんの伊勢型紙コレクションは膨大だとか。それでも昔のものはほとんど使えないので、デザインを復刻して使ったりしているのだそうです。

こんなパネルもありました。


東西、とあるのは、やっぱり東と西とでは昔から好まれるタイプが違ったのだそうです。みんな素敵♪

最近、「きもの宝典」という主婦の友社から出ている本を読んでいるのですが、これが非常に面白いのです。(写真をクリックすると詳細が見られます)


大正から昭和にかけて出版された雑誌「主婦の友」に掲載されたきもの特集ページだけを編纂して1冊の本にまとめたものなのですが、衣服として時代の変遷をたどるきもの文化が如実に理解できる内容です。

これを読んでいると、ゆかた、こそ、ものすごい大きな変化があったアイテムなのではないかな、と非常に興味深く感じています。

今回、三勝さんで色々お話を伺って、改めてゆかたの魅力を感じましたし、現代におけるものづくりの難しさも同時に感じました。コロナ禍でこの2年、夏祭りもなければ、花火大会もない中、ゆかたを着てお出かけしたい!というみんなの気持ちが来年こそは爆発させられることを祈るばかりです!

ちなみに、ゆかたの染色にからみ、注染についても過去記事があるのでご紹介しておきますね。ご興味ある方はぜひご覧になってください。その①からその⑤まであります!
注染工場見学へ〜その①〜


今放送中のNHK朝ドラ「カムカムエヴリバディ」で、主演の上白石萌音ちゃんが、白地のゆかたを着たシーンが話題になっていました。私も白地のゆかたに憧れがあります。来年の夏に向けて、皆さん、ゆかた要チェック、お願いいたします!


あこや

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